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先日、公式ニコニコ生放送で、スーパーコンピューター『』の紹介生放送を観ました。
これが世界一の速さだ!スーパーコンピュータ『京』のスゴさを開発現場から徹底解明 - ニコニコ生放送
観ていて面白かったので、視聴した内容と感想などを書きたいと思います。

「2位じゃダメなんでしょうか?」という迷言を生み出した事業仕分け騒動以来、その存在や今後が最注目されたスーパーコンピューター(以下:スパコン)ですが、理化学研究所(理研)×富士通による日本のスパコン『京』が世界一になったという事が去年、ニュースになりました。
日本のスパコンで名前が話題になったのは、地球シミュレータ以来でしょうか。
そんなスパコン『京』がどういうものなのか気になったので、この放送を観た訳ですが・・・。最初の『京』の紹介で、ハートをガッチリ捕まれてしまいました。

blog20120120k_Clipboard09.jpg
なにこれ。カッコイイ・・・

この『京』を観た視聴者による反応は凄いもので
blog20120120k_WS007967.jpg
このコメントの量でした。
暫くの間、驚きのコメントや「かっこいい」という弾幕が消えない程だったので、よほど衝撃的だったものと思われます。
スペックや性能は重要ですが、やはり、パッと見て「凄そう」だと思わせるのが最重要ですね。
この柱がない一つの大部屋に、地平線を遠く感じさせるようなライティングは最高だと思います。
また、京が収められた素体のデザインはシンプルながら、渋めの赤色のサイドがアクセントになっていて、筆文字の『京』の文字が存在感を出しています。
地球シミュレータを見た時は、変わったデザインだなと思っただけですが、京のデザインは明らかにカッコイイと思えるものだと思いました。
ちなみに、カッコイイ『京』の筆文字は、書道家の武田双雲さんが書いたものだそうです。

その後、視聴者の興奮が冷め上がらないまま、次のコーナーに突入。


  CPUスペック、構造


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まずは、CPUスペックと性能当たりの消費電力の紹介がありました。CPUはSPARC64TM VIIIfxで、スペックは128GFLOPS(16GFLOPS×8CORES)、8コア、2.0GHz、ピーク時の消費電力は58W、45nmプロセスで製造されているらしいです。
性能当たりの消費電力、GF(ギガフロップス)/W(ワット)は、IBM・INTELに続いて良いという話で、そのCPUを沢山束ねてノードという1まとまりの形にし、ノードを更に束ねて最終的に10PFLOPS(ペタフロップス)を超える演算性能を出しているという話でした。

また、『京』の構造は独特で、Tofu(Torus fusion)と呼ばれる構造で立体的に複雑に繋がっているようです。その複雑な構造に繋げる膨大な数のケーブルを、職人が間違えずに繋げたそうです。凄いですね。
OSはLinuxから要らない機能を削ぎ落したもので、操作はGUIではなくCUIでの操作が基本だそうですが、GUIも一応サポートしているというような話をしていました。

CPUの運用温度は驚きの30℃。一般的に使われているPCのCPUの運用温度は大体40~70℃位までの範囲なので、この温度は驚きの冷たさです。
この低温運用の根拠となっているアレニウスの法則は、運用温度が低い程に電子製品の寿命が伸びるという法則で、個人的には、コンデンサの寿命を調べた時に、目にしたことがある法則でした。

blog20120120k_WS007973.jpg
CPUパッケージやマザーボードの紹介もありました。
昔のCPUやグラボのGPU、ノートパソコンのCPUのように、コアが剥きだしの状態なのかと思っていたら、しっかりとヒートスプレッダが付いていました。

blog20120120k_WS007977.jpg
マザーボードは特殊で、メモリ、CPU、メモリ、CPUといった順番で配置されています。
用途が用途だけに、搭載しているメモリの量が半端無いです。
しかも、CPUの上にヒートパイプが張り巡らされているんだなぁと思っていたら、冷却はなんと、水冷
最初ヒートパイプだと思っていたものは、冷却液循環用のパイプでした。あまりの規模の水冷システムに驚きました。


  建物の構造、耐震対策


blog20120120k_WS007981.jpg
不思議だなと思ったのが、地下や1階ではなく、ビルの一番上の階に『京』が設置されているという事ですが、これは後で理由を察する事ができました。
というのも、熱の対流に合わせて、京のルームの下の階には冷却設備が完備され、地下には地震対策の為の免震設備が完備されているからです。
その2つの場所を考えると、最上階に『京』を置くのがベストなのだなと思いました。

冷却設備のある階からの生中継もあったのですが、冷却階の風は物凄く、アナウンサーの方が持った鯉のぼりが、豪快に泳ぐほどの風量がありました。
blog20120120k_WS007983.jpg

地下の免震設備は徹底していて、ゴム・バネ・鉛の3種類のショック吸収用ダンパーが揺れを吸収、揺れる幅を吸収する為に建物と基礎の間に隙間を開けて、揺れによる接触で建物が壊れないようにしているという話でした。
地震対策は万全ですが、地震で停電が起こった際には自家発電に移行してストレージの状態を維持し、『京』自体の動作は止まる流れになるそうです。


  スパコンとしての活用法


『京』の構造や、それを支える建物の構造の説明が終わった後は、スパコンとしての活用法の話がありました。
実用されると、新薬の開発や、新物質の発見、気象や地震などの予測、衝突実験、銀河や星の誕生を今までより早く細かくシミュレーションしたりできるそうで、例えば、気象だと解析できる解像度が高くなり、天気予測の精度が上がるという話がありました。

放送中にあった話を書くと長くなりそうなので、詳しくは、『京』のサイトを御覧ください。
京コンピュータ スパコン|独立行政法人理化学研究所 計算科学研究所(AICS)
スパコンと言えども、苦手な計算もあるようで、構造上、遠くのノード同士をやり取りするような計算は、通信時間に時間を取られてしまって計算が進まないといった話もされていました。

その後、視聴者に向けて、どの分野に興味がある?かというアンケートがありました。blog20120120k_WS008014.jpg
ニコ生視聴用の新プレイヤーでアンケートが表示されないという仕様的なトラブルがありましたが、投票率のトップは「物質と宇宙」32.9%になりました。
続いて、「新物質・エネルギー」23.5%、「次世代ものづくり」16.9%、「生命科学・医療」17.2%、「防災・減災」9.4%の順です。
「物質と宇宙」がトップだったのは、宇宙分野に人気がある、ニコ動らしい結果でした。

物質と宇宙を研究すると、将来新たな物質や法則の発見により、今の生活をガラっと変えることになるブレイクスルーが起こる可能性を秘めているらしいです。夢がありますね。
去年大きな震災を経験したのにも関わらず「防災・減災」が最下位だったのは、視聴者の多くが災害地域外の人というのが一番の理由だと思われます。

そして、拍手コメントに包まれたまま番組が終了。
blog20120120k_WS008017.jpg
番組の評価のアンケートは、とても良かったが80.9%という高評価に達しました。
初心者にも判りやすいように噛み砕いた話が多かったので、私的には判りやすい放送だと思いましたが、番組中には「わからん」というコメントを結構見かけました。
それでも、凄いのは分かるけど良く分からない=何だか凄い、という考えに繋がると思うので、『京』の紹介番組としては良かったのではないかなと思います。


  スパコンベンチマーク世界ランキング2011


最後に、『京』が世界一をマークした、スパコンのベンチマークランキング2011/11月版です。
November 2011 | TOP500 Supercomputing Sites
Rank  Site  Computer  TotalCore  Memory(Gb)  Rpeak(GFs)  Power(Kw)
 1  RIKEN Advanced Institute for Computational Science (AICS)
Japan
 K computer, SPARC64 VIIIfx 2.0GHz, Tofu interconnect
Fujitsu
 705024  1410048  11280384.00  12659.89
 2  National Supercomputing Center in Tianjin
China
 NUDT YH MPP, Xeon X5670 6C 2.93 GHz, NVIDIA 2050
NUDT
 186368  229376  4701000.00  4040.00
 3  DOE/SC/Oak Ridge National Laboratory
United States
 Cray XT5-HE Opteron 6-core 2.6 GHz
Cray Inc.
 224162  -  2331000.00  6950.00
 4  National Supercomputing Centre in Shenzhen (NSCS)
China
 National Supercomputing Centre in Shenzhen (NSCS)
China
 120640  -  2984300.00  2580.00
 5  GSIC Center, Tokyo Institute of Technology
Japan
 HP ProLiant SL390s G7 Xeon 6C X5670, Nvidia GPU, Linux/Windows
NEC/HP
 73278  90919  
2287630.00
 1398.61
5位までを表にしてみました。

表にして気が付いたのですが、『京』は消費電力が高いですね。
『京』は、2位とは2.4倍の性能差があり、言葉通り桁違いの性能ですが、消費電力も桁違いで、大きな電力が必要なようです。
扱えるメモリーも桁が違うので、今まで以上の計算ができるのだろうとは思いますが、電力を見て、このご時世にこんなに電力高くていいのかな?と思ってしまいました。

一応、『京』のサイトには「総電力:  最大20MW(計算機システム)」と書いてあったので、約12.7Mwの現在でも余裕はあるようです。今後CPUの製造プロセスが微細化した時に、CPUを取り替えて電力消費を減らしたり性能をアップさせたりするのでしょうかね?
PC自作屋の私としては気になる所です。


※2015/11/11:添削修正

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