ネットでイプシロンロケット初号機の打ち上げを目撃

2013年9月14日14時頃、惑星分光観測衛星『SPRINT-A』を搭載した国産の新型ロケット『イプシロン』の打ち上げをネット配信で視聴しました。

元々、イプシロンロケット初号機は8月27日に打ち上げ予定でしたが、打ち上げ19秒前にロケットが姿勢センサーの異常を検知した為、9月14日に延期となったという経緯があります。


イプシロンロケットは、ペンシルロケットから『はやぶさ』を打ち上げたM-Vロケットまでの流れを継承する、最先端・低コストのロケットです。
イプシロンロケットについて詳しくは、以下のJAXA特設サイトで紹介されています。
→ イプシロンロケット/惑星分光観測衛星（SPRINT-A）特設サイト | ファン!ファン!JAXA!

また、今回の打ち上げの様子については、Youtubeやニコ生で録画・TS放送を見ることも出来ます。
→ ▶ イプシロンロケット試験機による惑星分光観測衛星（SPRINT-Ａ）の打ち上げ中継=録画= - YouTube
→ イプシロンロケット試験機 / 惑星分光観測衛星（SPRINT-A） 再打ち上げ生放送 - 2013/09/14 13:25開始 - ニコニコ生放送
ニコ生の方は、コメントで当時の視聴者の歓声や心境などが見れます。
続いてはライブ配信終了までの様子を画像や情報を加えてダイジェストで紹介します。
(※画像は主にYoutubeキャプです。)

■射点

紹介映像で出てきたロケット打ち上げの射点映像です。(※録画映像)
イプシロンは中小規模の衛星打ち上げ用ロケットの為、射点はかなりコンパクトでした。


ロケットの打ち上げ費用は約38億円。
人工知能『ROSE』の支援などによって、組み立てから打ち上げまでを世界のロケットの中でも最短の7日で済ませる事が出来るシステムとなっています。

前身のM-Vの打ち上げ費用は約80億円。ロケットの組み立てから打ち上げまで2ヶ月かかっていた事を考えると劇的な低コスト化・打ち上げシステムのコンパクト化を実現しています。
尚、将来的には打ち上げコストを約30億円以下まで抑えるそうです。


打ち上げ地点は、種子島ではなく、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所です。(○の部分は見学場。)


こちらは打ち上げ当日13時57分過ぎの見学場からの映像です。
若干白いモヤがかかっており、空は曇っていて風もあるという状態で、打ち上げ直前まで、「本当に打ち上がるのかな？」という感じでした。

また、警戒区域に船舶が近付き、打ち上げが15分延期されるというアクシデントもありました。(尖閣諸島のニュースが増えていて、ネット上では"某国の船"という憶測も飛び交いましたが、結局、船舶の詳細は不明の様です。)
→ イプシロン、打ち上げ15分延期　警戒区域に船舶　　：日本経済新聞

■打ち上げ

ロケット自体が小型なので、H-IIAロケットよりも打ち上げインパクトは劣るかな？と考えていましたが、全然そんな事はありませんでした。
固体燃料の爆発的な推進力でモクモクとした煙とバリバリと凄い音を出しながら、打ち上げの感動と共に空の彼方に消えて行きました。

■ロケット飛行計画詳細
打ち上げ後の飛行計画です。(見辛い場合は、公式計画書(PDF)9p以降を参照)

ミッション終了は15段階目、61分40秒後となります。
 
■ロケット飛行計画(ライブ配信)

ロケットが飛んでいる最中はGoogle earthが表示され、ロケット位置と状態が表示され続けていました。この表示がとても分かりやすく、視聴者に大好評でした。


計画第三段階、フェアリング分離成功。


第二段・第三段燃料終了。
速度は6.9km/sに到達。加速の為の噴射が終わり、PBSに移行。


PBSには、固体燃料と違って微調節が出来る液体燃料(ヒドラジン)で動く小型液体推進系のスラスタが搭載されており、繊細な軌道調整と姿勢制御を行うことが出来ます。
→ ISAS | 第5回：イプシロンロケットの推進系 / イプシロンロケットが拓く新しい世界
→ 未来を切り拓く次世代ロケット「イプシロン」目指すのは打ち上げシステムの革新 (4/6) | Telescope Magazine




ライブ途中には、ロケット側面に搭載されたカメラの映像もありました。

■衛星分離
最後は本題の衛星分離です。

今回搭載された衛星は、惑星分光観測衛星の『SPRINT-A』。
ニコ生の放送では真ん中の筒が門松の竹に見えることから「門松」と呼ばれていたのが面白かったです。


無事分離は成功。
分離地点はブラジルの下端で、高度は地上から1,150km地点でした。


ちょっと分かり辛かったですが、分離時のカメラ映像もありました。下の物体がSPRINT-Aです。
分離成功後、『ひさき』という愛称がJAXAから与えられました。(以下ひさきと呼称)

この衛星は、今まで殆ど観測されていない極端紫外線を観測する事によって宇宙の謎に挑む事を目的とした衛星です。
例えば、火星から大気が失われた謎に挑むことが出来るそうで、この研究が進めば、遠い未来、何処かの惑星をテラフォーミングする事になった際に役立つ事は間違いないでしょう。
年末年始には、ハッブル宇宙望遠鏡とX線天文衛星『すざく』今回の『ひさき』で木星の観測が決定しているそうで、『ひさき』は早々に世界に大きく貢献する事となります。

また、『ひさき』側面には、これまでの3接合太陽電池よりも桁違いの電力を生み出しながら、柔軟で軽く曲げることも出来る薄膜太陽電池が実証の為にオプションとして搭載されているそうで、実証されれば、また一歩、宇宙開発が進化し、各国の衛星などに搭載される事になれば日本に大きな利益をもたらす事が期待できます。


ライブの最後はロケット発射の映像と共に「終」の文字。そして、JAXAのマークで綺麗に締め括られました。
JAXAのライブ配信はいつも分かりやすいのですが、今回は特に「楽しく・分かりやすい」ライブ配信でした。


ちなみに、ロケット打ち上げ直前(13時57分頃)のネット上でのリアルタイム・累計視聴者数は以下の様な感じでした。

・JAXA直接配信 - 視聴者数不明
・Youtube(JAXAミラー) - 約143,000人(リアルタイム)
・USTREAM(JAXAミラー) - 約28,000人(リアルタイム)
・ニコニコ生放送(JAXAミラー) - 約103,000(途中累計)、2～30,000人？(座席数からの推定リアルタイム視聴者数)

他に、ロケット打ち上げの様子を別途配信していた、NVS宇宙科学チャンネル(座席数3000(公式資料))とNVSチャンネルをミラーしていたユーザーニコ生の宇宙コミュニティ(座席数1500)が満席でした。
→ イプシロンロケット試験機　／　惑星分光観測衛星（SPRINT-A） 打ち上げ生放送 【独自映像・配信チャレンジ】 - 2013/09/14 13:00開始 - ニコニコ生放送
→ 【生中継】イプシロンロケット・SPRINT-A 打上げ生放送再挑戦！【NVSミラー】 - 2013/09/14 13:00開始 - ニコニコ生放送
NVSと宇宙コミュを見ているのは、私の様な複数の放送を見ている重複視聴者だと思われるので数に含めないとしても、ピーク時20万人以上は打ち上げを見守っていたと考えられます。

TVの地上波放送では、NHKのお昼のニュースで少しだけ報道され、衛星分離についても速報でテロップが入った様です。
地上波やBSにマルチチャンネルを含めて沢山チャンネルがあるのにも関わらず、何処も打ち上げを番組として放送していないのは残念ですが、まあ、前向きに考えれば、ネットがあって良かった！ネット時代バンザイ！という感じですね。

今後も気になる宇宙関連のライブ配信があったら観て記事にしたいと思います。


※2015/11/11：添削修正