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Home > ブログ > 未分別 > 日本原産ロニセラの伝播と考察

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最終更新日:2017/05/11

現在では、欧米で品種改良された日本原産のロニセラが逆輸入されて日本の園芸市場で流通していますが、そもそもどういう形で日本のロニセラが欧米に渡ったのかという事と、どう広まったのかという事が気になりました。
これについて何か資料が無いかと探していたら、ロニセラに関する論文の1つに伝播について触れたものを発見したので、伝播部分だけをかい摘んでまとめて置きたいと思います。

CiNii 論文 -  エミリ・ディキンスンと日本の花(1)-Lonicera Japonica 日本産スイカズラ- 
神戸女学院大学:鵜野 ひろ子 氏による論文
イギリスの詩人で園芸家であったEmily Dickinson氏が所有していたという品種が書かれていない謎のロニセラの標本。その謎に迫るこちらの論文は、とても興味深い内容だったので、気になる方は是非。

・何時、アメリカに渡ったのか
まず、アメリカに渡った最初の日本原産ロニセラについてですが、記録として残っている事としては、1853年と1854年のペリー日本遠征の際に同行した植物学者:James Morrow氏と、通訳:Samuel Wells Williams氏が日本で採集したものがあるそうです。
(※日本の鎖国は1639年から1854年まで。植物学者:James Morrow氏の名前は、キンギンボクの学名『Lonicera Morrowii A.Gray』として残りました。学名の最後に入っているA.Grayという名前はハーバード大学のAsa Gray博士の事で、ペリー日本遠征で持ち帰った植物のリストを作成した人物です。)

1855年2月16日には、17ケース、1500~2000種の日本原産植物が香港経由でアメリカに生きたまま到着した様で、それらの植物は栽培や実験に使われて、一部は農夫や園芸家に渡された様です。

アメリカの実業家:Joseph Breck氏が出版した1859年の園芸本には、アメリカ原産のロニセラが4種紹介されており、ヨーロッパ原産のロニセラや中国原産のロニセラ(※現在の分類だとロニセラに似た花を咲かせる別種)も紹介されていますが、この時点では日本原産のロニセラはまだ紹介されていません。
Caprifolium. Honeysuckle - ※データ化された園芸本のロニセラ項

そして1862年には、生きた日本原産ロニセラがアメリカの医師:George Rogers Hall氏によって、横浜からアメリカ ロングアイランド フラッシングのParsonsという養樹園に運ばれて増やされた事が記録に残っており、そこからアメリカ東部に広まったとされるのが定説とされているそうです。


・何時、ヨーロッパで知られたのか
一方、ヨーロッパへは中国経由で日本原産のロニセラが渡った可能性があるとの事が示唆されていました。
古い記録として残っているルートとしては、元々、中国で香りと薬効に優れるとして珍重されていた日本原産のロニセラが、1806年にWillam Kerr氏よって中国の広東から運ばれ、東インド会社に紹介されてヨーロッパで知られる事となった事が判明しています。

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ここからは、鵜野氏の論文をヒントにして分かった、ヨーロッパと日本原産ロニセラに関連する流れをまとめます。

分類学に多大な影響を残したスウェーデンの博物学・生物学・植物学者:Carl von Linné(カール・フォン・リンネ)氏の弟子で、同じく分類学に多大な影響を残し、オランダ東インド会社に入社していたスウェーデンの博物学・植物学・医学者:Carl Peter Thunberg(カール・ペーテル・ツンベルグ)氏が1775年~1776年に日本に滞在し、800点余りの標本を集めて持ち帰ったそうです。
その中には、1784年に登録された『Lonicera japonica Thunb.(スイカズラ)』もあり、名前にツンベルグ氏が分類した事を示す『Thunb』が入りました。
IPNI Plant Name Query Results

鳴滝塾、アジサイ、国外退去処分のシーボルト事件などで知られるドイツ人医師・植物学者:Philipp Franz Balthasar von Siebold(フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト)氏は、開国前の1823~1829年と、開国後の1859~1862年に2回来日。
集めた標本12000点余りを持ち帰り、多くの種名の最後にシーボルト氏の名前を示す『sieboldi』か『sieboldii』、又は同業者の名前も含む『Sieb. et Zucc.』が入りました。
(※日本原産ロニセラに名前の入ったものは見つけられず。)

1860~1864年には、植物分類学者:Carl Johann Maximowicz(カール・ヨハン・マキシモヴィッチ)氏が来日。他のアジア諸国も巡って植物の標本を集めた結果、アジアの植物分類学に多大な影響を残しました。
シーボルト氏が死去した後、未亡人から植物標本の一部を買い取って資料の分散を防止し(※ツンベルグ氏による植物標本も購入)、日本の植物学者から新種と思われる植物の同定を頼まれるなどの尽力・貢献も多く、日本のロニセラにもマキシモ氏を示す『Maxim』が入ったものが複数見られます。
『Lonicera linderifolia Maxim.(ヤブヒョウタンボク)』など。

注目したいのは1878年に登録された『Lonicera tschonoskii Maxim.(オオヒョウタンボク)』の学名です。
日本で信頼を置いた人物で、マキシモ氏が祖国に帰った後も代わりに植物を採取して送り続けた、須川長之助 氏の名前を示す『tschonoskii』が献名として入っていて、2人の信頼関係をみる事ができます。

植物学・分類学をヨーロッパに学んだ後、発見された日本原産ロニセラは、約半数を日本人の植物学・分類学者が発見・命名する事となります。

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こうして日本原産のロニセラが詳しく分類され、図鑑などに載るようになり、一部品種はコレクターや、植物ハンターなどによって海外に渡り、育種家などによって枝変わり品種が生み出されたり、海外の品種と交配され、ごく一部が逆輸入される様になりました。

園芸店で一番よく見かけるのが『Lonicera japonica 'Mint Crisp'(ミントクリスプ)』ですが、『Lonicera japonica 'Halliana' (ハリアナ)』も売られているのを見かけます。

流通している『Lonicera × americana(アメリカーナ)』も、特徴から『Lonicera japonica』と何かの交配種だと思われますが、掛け合わせた親について詳しくは分からず仕舞いでした。
(※海外で流通している、『Lonicera japonica 'purpurea'(パープレア or プルプレア)』の特徴がアメリカーナに非常によく似ているので、どちらかが同一のもの(シノニム、商標名など)では無いのかと調べてみましたが、こちらも分からず仕舞いです。)

また、『Lonicera japonica var. repens(レペンス)』は、イギリスの王立園芸協会(RHS)で、ガーデンメリット賞(AGM)を獲得しています。
(※日本国内での流通は確認できず。)

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